先日お伝えさせていただいた新入社員研修の課外講座。
後編の今回は、午後の課外講座「身体の使い方と発想力」の様子をお話しさせていただきます。
▼午前の研修の様子はこちらからどうぞ
2021年5月1日 staff blog 「 「アートから学ぶ探求心・身体の使い方と発想力」研修のお話 前編 」
三由さんの研修場所は、仁保地域交流センターからさらに奥の里山へ入った私小説家嘉村礒多の生家「帰郷庵」です。
課題は【川の石をひとつ選んで、社長にプレゼンする】というもの。
帰郷庵の目の前には仁保川が流れているのですが、石探しはその水辺で行われました。
目が覚めるような冷たい水面に、春の面影。
午前中の散歩を経て身体が外へと適応する意識があり、自然の存在がダイレクトに流れ込んでくるようで気持ちよく感じられました。
上流、下流、茂みのほうへ、光の射すほうへ。
進んだり留まったり、五感を使い、時には直感を頼りに「この石だ」と思えるひとつを探しました。
再び帰郷庵に集まってプレゼン開始。
かたち、色、手触り、石の使い方。創造した価値。
プレゼンはモノそのものの魅力や選ぶ言葉だけでなく、所作やパフォーマンスも大切なこと。
自分が見つけた価値をどう伝えるかに向き合う時間でしたが、それぞれ異なる着眼点であったり似た感覚で選んでいることなど、ここでもお互いの「差異」と「共通点」に気付くことができました。
なにより面白いと思ったのは、皆それぞれに個性や性格が現れたセレクトになっていること。
そしてそれは、どんなルートでどういった探し方をしていたのかという行動や思考にも反映されているもので。
人の本質を垣間見るようなそんな体験でした。
写真の真ん中に建つ石、見えますでしょうか。
石探しをする30分ほどの間で三由さんが作っていました。
これは素手のみで石を重ねてオブジェにする「ロックバランシング」といって、日本では石花と呼ばれている石遊びです。
ぎりぎり安定するかしないかの瀬戸際かつ自由な佇まい。
絶妙な不安定さに美しさすら感じました。
帰郷庵のお庭では、細いベルト状のラインの上でバランスをとる「スラックライン」にも挑戦しました。
地に足がついていること、身体にかかっている重力を感じること、ひとつひとつの感覚器官を探るように。
呼吸を整え、無の心で全身の力を抜いて、身体を預ける。
三由さん曰く「意識と体と地球の軸がちょうど一点に重なり合うように、バランスが釣り合う感覚」になるのだそうです。
三由さんのお手本を見ていると簡単そうに思えたのですが、実際には一筋縄ではいかないものでした。
そんななかでもコツを掴みかけているスタッフが。
柔軟さと吸収力の高さに感心させられます。
人の根源的な欲求/生であるアート思考。
二足歩行というのは不安定な状態である。
人は不安定さに身をおくことで感覚や集中力が変わること。
現代の生活スタイルと、人が本来宿している身体能力の間にあるズレについて。
研修の間に三由さんが投げかけるこれらの“問い”。
落としどころをはっきりと見つけられないこともありましたが、答えをひとつに絞ったりすぐ結論づけることを優先するのではなく、考え続けることそのものにも意味があるのではとそんなふうに感じる研修でした。
研修が終わってからは皆で夕食の支度に取り掛かりました。
帰郷庵から歩いてちょっとのところに平家の泉という湧き水があるのですが、今回はそのお水を汲んでお料理することに。
じゃばじゃばと際限のないお水はキリッとした味です。
またここ一帯が四季の森と呼ばれているだけあって、さまざまな落葉広葉樹が植えられていました。
春は桜、夏は百日紅、秋は紅葉や白樺、冬は梅など、鮮やかな景観を楽しめそうです。
空気がすっきりしているからなのか、川の匂いを強く感じたのですが、どこか特別な場所に思える時間でした。
帰り道、ご近所さんにご挨拶すると、ちょうど春の山菜コゴミの選別作業をされているところでした。
「こっちが畑なのよ。ぜひ持って帰って」と案内して下さり辿り着いたのは、フキやウド、ワサビなども育てられている豊かな畑!
両手いっぱいのコゴミに頬がゆるみます。
こんなに素敵な山の幸をいただけたのだから釣りをして川魚も獲れたらよかったねなんて言いながら皆で帰路につきました。
その途中に見つけた川べりのベンチ。
なんて素敵な空間なのでしょう……!(ひとつの桃源郷のようです。)
皆で協力し合って作った、かまど炊きの白米と豚汁。
それに山椒添えの玉子焼きなども。
下茹でしたコゴミはご近所さんがお勧めして下さった酢味噌でいただきました。
ほんのり粘り気があり、シャキシャキした歯ごたえが新鮮な春の味です。
地のものを使って料理をつくり、美味しく食べる。
贅沢で幸せな食卓でした。
その後もスラックラインを続けたり、五右衛門風呂の薪をくべたり、囲炉裏で語らったり。
様々な経験と時間をともにしてスタッフ同士の距離も近くなれたように思いますし、非常に中身の濃い1日になりました。
鈴木さん、三由さん、刺激的な機会をありがとうございました。