〇二十四節気の三番目【啓蟄】
雨水から数えて15日頃、今年は3月6日が啓蟄(けいちつ)の日にあたります。
啓は戸を開くこと、蟄は虫が土の中にこもることから、虫たちが地上に出てくる様子を指しています。
山肌はいっせいに淡い緑に染め変わり、冬眠していた虫や動物たちも目が覚めるほど、穏やかな気候になってくる季節。
花のつぼみが開くことを花笑み(はなえみ)と言うそうですが、足元の草花もまもなく芽吹き満開に。
そんな春の訪れを感じる一方で、時に振り出す雨がどこか憂鬱で悲しい気持ちになることを「春愁(しゅんしゅう)」と呼びます。
気候の変化に体が付いていかなかったり、新しい環境への期待に胸が膨らむ不安定な季節でもあるのです。
そんなときは、はちみつミルクやカモミールティーなど、ホッと温まる飲み物をのんだり、よもぎ湯につかって気分転換をして、リラックスする時間を過ごしたいですね。
〇山の神様をお迎えするお団子
古くから米作がさかんだった日本には、豊作祈願の風習が今もたくさん残っています。
そのひとつが3月16日の「十六団子の日」(じゅうろくだんご)。
東北や北陸地方を中心に行われている行事のため、西日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
伝承によると、米作りが始まる頃(3月16日)に山の神様が田んぼに降りてきて、収穫が終わる時期(11月16日/地域によっては10月16日)に再び山へ上がっていくと言い伝えられているそうです。
そのため、この2日間は神様をお迎えできるよう、米粉で作った16個のお団子をお供えする習わしがあります。
お団子の理由は、お餅をつく音によって「こちらに来てくださいな」と神様を呼ぶ意味合いが込められていたとか。
作ったお団子は、きなこや黒蜜をかけたり、お汁粉にしたり、地域や家庭ごとに楽しみましょう。
〇芽吹きの春と山菜
店先には様々な山菜が並び始めました。
せっかくの春の味覚を今年は存分に味わってみませんか。
昔から「春は苦いものを食べよ」といわれているのは、苦味のある山菜にはミネラルやポリフェノールなど、細胞を活性化させる成分が多く含まれているから。
冬から春への移り変わりとともに、元気よく活動できるよう準備を始めるにふさわしい食材です。
・ふきのとう
雪どけの頃に顔を覗かせるふきのとうは、山菜のなかで1番早く収穫されます。
独特な苦みはクセの強さがありますが、天ぷらにしてお塩で頂くのが定番です。
・たらの芽
もっちりした触感とのほかな苦みが人気の”山菜の王様”。
小さいものはホクホクの天ぷらに、芽が開いて大きく育ったものは茹でて胡麻和えにしましょう。
・山うど
若芽の時の香りが豊かな山うど。
葉や新芽は天ぷらで、茎はしっかりとした歯ごたえを楽しめる酢味噌和えが◎です。
・わらび
山奥まで入らなくても、身近な山野で収穫できる山菜。
ですが、食中毒を起こすほどアクが強いので、十分にあく抜きをしましょう。
どんな料理にも合いますが、炊き込みごはんやおひたしがおすすめです。
・のびる
ラッキョウとニンニクを足して割ったような味わいののびるは、土手や畦道でよく見かけます。
生食できるので、水洗いをしてお味噌で頂きましょう。
・せり
春の七草のひとつにされているせり。
茹ですぎると固くなってしまい、味が落ちるので要注意…!
手軽なおひたしが定番かもしれませんが、お鍋にしても良さそうです。
・行者にんにく
収穫できるまで5年以上かかるため、天然物は貴重とされ、北海道ではアイヌネギとして親しまれているそう。
ニラや玉ねぎのように、炒め物にすると美味しく頂けます。
また醤油漬けにすればご飯やお酒のおともにぴったりです。