歴史ある街並みの記憶に敬意を払い、現代の感性で磨き上げた平家。
空間を緩やかに仕切る「紫根色(しこんいろ)」の造作家具が、凛とした品格を住まいに添えています。家族が集う食卓を中心に、光と風、そして豊かな色彩が巡る、静かな美しさを湛えた住まいです。
玄関の扉を開けると、足元から奥へと長く伸びる造作家具が視線を導きます。下駄箱としてだけでなく、ベンチやTVボードの機能も兼ね備えたこの水平のラインは、住まいに心地よい奥行きをもたらす道標のようです。
この家の中心であるキッチンと家の顔である玄関。二つの空間を緩やかに仕切る造作収納に施されたのは、日本古来から高貴な色とされてきた「紫根色」。歴史ある街並みへのオマージュとして選ばれたこの深みのある色彩は、ただの家具としての役割を超え、住まいに時を超えた品格と深みを与えています。
個室以外に扉を設けない「回遊」の設計は、家全体をひとつの大きな「器」のように繋げました。キッチンで家事をする時も、食卓を囲む時も、紫根色の凛とした空気感に見守られながら、家族の温度を常に感じることができます。
北側の中庭は、壁面に反射した柔らかな間接光を室内に招き入れ、紫根色の家具に静かな陰影を落とします。さらに深い軒下空間が内と外の境界を溶かし、四季の移ろいを日々の暮らしへと引き込みます。
古の美意識と現代の機能が重なり合い、何気ない日常を特別な物語へと変えていく。
ここは、静寂の中に確かな気品を宿した、安らぎの住まいとなりました。















