その人をその人たらしめる空間——それにはどのような暮らし方・建物が相応しいのか、根源に立ち返りお施主さまとともに対話を重ね、設計施工いたしました。
光や風、風景によって広がりが生まれる平屋のお住まいです。
回遊する建物の中心に据えた坪庭の木々が造作バスルームや土間ホールに陰を落とします。
またオリジナルキッチンを計画したLDKの一角には小上がりのベッドスペースがあり、ワンルームのように過ごすことができます。
プライバシーを高めたい時には引き込みの建具で間仕切る造りとさせていただきました。
均質空間への細やかな整合、物と物の境界を意識した引き算の美学。
その人らしくプレーンに過ごせる家を目指しています。
[ 設計意図 ]
「どんな暮らしをされたいですか?」
初めてお会いさせていただいて訊ねた時のお返事がこの“価値のある暮らし”でした。
その言葉がとても印象深く、その後もしばらく記憶に残ったことを覚えています。
光と影、樹々のゆらめき、季節の移ろい、無機質な静寂、土地が持つ特性、住まわれる人の感性と価値観。
計画では家づくりへの想いに向き合い寄り添いながら、これらの事柄を心に留め設計させていただきました。
一歩進んでは二歩下がるように。
ひとつひとつ丁寧に進める家づくりはたった一棟の奥深さがあります。
その過程をご一緒させていただけたこと幸せに思います。
お施主さまがもっとも安らげる“原点のような場所”となるよう願っています。