年に1度、スタッフ皆で建築を学ぶ研修旅行。
今年は日本の真ん中あたりに位置する山梨県へ。
東京羽田空港からは高速バスで2時間ほどの距離です。
建ち並ぶビル群を抜けると、少しずつ建物が低くなり、山口県のような穏やかな町並みに。
紅葉が綺麗な山々や透き通るような川が広がるなど、豊かな自然の景色に癒される旅路でした。
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昼食を兼ねて伺ったのは、複合施設のevam eva yamanashi。
山梨県を選ぶきっかけのひとつになったほど、訪ねてみたいお店でした。
evam evaさんは、1945年に創業したニット会社から始まったファクトリーブランドです。
企画・製法・出荷まで、自らの手で行いながら、ニットを通して暮らしを心地よくするものづくりを提案されています。
長屋の門をくぐると、ショップとレストラン、ギャラリーが凛とした佇まいで迎えてくれました。
まるで庭と建物が一体になっているかのよう。
どこかほっとするような、懐かしさを感じる空間です。
【衣】着ること、【食】食べること、【住】暮らすこと。
ここには日々の生活を彩るものと穏やかな時間が流れていて、日がな過ごしていたいと思える場所でした。
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次に向かったのは、白州の水を使った酒造りを300年続けている酒蔵 山梨銘醸さん。
今から180年前、江戸時代の天保の頃に建てられたこの建物を見学させていただきました。
金物などを使わず、大工さんの手刻みによる木組みのみで、6年もの歳月をかけて完成したのだそうです。
梁や柱は深い飴色に変化していて、力強い存在感に圧倒されそうになりました。
技術の進歩や機械化で、生産性がよくなったり便利になった一方で、こうした人の手と時間を惜しまず作られたものは、代えがたい財産だなとしみじみしました。
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お宿は星野リゾートさんが運営するリゾナーレ八ヶ岳へ。
八ヶ岳の豊かな自然だけでなく、アクティビティやショップも充実していて、ホテル内だけでも小さなまちのよう。
ちょうどクリスマス仕様できらきらと華やかでした。
周辺をあちこち巡る旅もいいですが、この施設内で1日満喫する過ごし方も良さそうです。
ここはカフェスペースを設けた本屋さん。
隣接した空間にはワインサーバーを堪能できるワインハウスもありました。
翌日、早起きした朝にはホテル周辺の森林散歩へ。
朝の澄んだ空気と白樺などの木々が広がる風景に、清々しい心地で充たされました。
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2日目に訪れたのは、南アルプスや八ヶ岳を望める北杜市にある清春芸術村。
ここは美術館や図書館をはじめ、11もの建築・作品が点在する文化複合施設です。
(この春には、現代美術作家の杉本博司氏と建築家の榊田倫之氏が手がけた新しくゲストハウスも新設されたようです。)
十六角形の煉瓦づくりのこの建物は、ギュスターヴ・エッフェル氏が設計した集合住宅アトリエ ラ・リューシュ。
シャガールやモジリアニなどを生んだアトリエ兼住居を再現した建物です。
残念ながら今回は建物内に入ることはできませんでしたが、なかの造りは螺旋階段が中央におかれた吹き抜けで、八角形の廊下を通して各部屋に繋がっているのだとか。
部屋ごとにキッチンやバス、トイレも当時のままついているそうで、ロマンがふくらむばかりでした。
こちらは安藤忠雄氏設計の「光の美術館」。
人工的な照明はなく、移り変わる自然の光のなかで作品を鑑賞します。
曇り空の淡い光が心地よく、隙間からのぞく紅葉のコントラストが綺麗でした。
20世紀最高の宗教画家とされるジョルジュ・ルオーを記念して建てられた「ルオー礼拝堂」。
チョコレート板のような扉や、ルオー氏が手がけたステンドグラスが印象的な建物です。
設計は谷口吉生氏。
光の取り入れ方がおもしろく、安藤氏とはまた違うコンクリート×光の設計を体感しました。
芸術村の敷地はこんなにもゆったりとしたものでした。
左端に写るのは、藤森照信氏が設計を手掛けた「茶室 徹」です。
春は樹齢90年余りの桜たち、初夏は藤の花、夏は新緑、秋は紅葉、冬は真っ白な雪に覆われた名峰と、四季折々の風景も見所のようです。
敷地を囲む桜が満開の春、茶室から見える風景は想像以上に美しいのだろうと思います。
門をくぐれば周りの雰囲気とは少しちがう、独特な空気が流れていたように感じました。
あちこち散策しながら、静かで濃密な時間に浸りました。
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山梨県最後のごはんは、名物のほうとう鍋で。
かぼちゃや白菜など野菜たっぷりの食べ応えあるお鍋。
もちもちな平麺も美味しくいただきました。
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ひとつ贅沢な我儘をお願いできるようならば、新倉富士浅間神社からの雄大な富士山を拝めたら、なお良しでした。
400段近くもの石階段を登り切った山腹で、想像力を働かせて思い描きました。
(晴れていればきっと、こんな眺めを満喫できたはずです…!)
他にも、立ち寄った先はいろいろ。
気づきも多く、充実した2日間になりました。
皆さまにはお休みをいただきましてありがとうございました。
おかげさまで建築や空間づくりをたくさん吸収できたように感じています。
年末はもちろん、新年への仕事に活かしていけるよう努めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。