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I.D.Worksの日々を綴ったブログです。

新社屋敷地内に建つ古民家 住宅1のお話

家づくりの技術

こんにちは。技術室の福田耕平です。
I.D.Worksの新社屋敷地内には複数の建物が建ちならんでいますが、今回は古民家「住宅1」にまつわるお話をさせていただきます。

 

 

I.D.Worksはこれまで多くの木造住宅リノベーションに取り組んでいます。
その対象となる木造住宅は多様で一つ一つ違うため、建物の状況に応じたきめ細かい設計、補修や補強、施工方法を考えていく必要があります。

この点については新築住宅とは違う難しさがあります。
「ここはどうするか」と判断する場面がはるかに多いのです。

 

現存する木造住宅には「この年代の木造住宅の傾向」というものがあります。
特に昭和25年に施行された建築基準法の登場は大きなポイントで、それ以前の構造(伝統工法と呼ばれます)とそれ以後の構造(在来工法と呼ばれます)では、かなり違います。
建築基準法に基づく在来工法も、後の法改正に合わせて大きく変化しています。

 

また建築当時の材料、シロアリ被害、後の改修・補修の有無などでも個別に違いがあります。
古い木造住宅については俗に「古民家」といった言い方がありますが、この用語については法律的な定義はありません。

私の感覚からすると、建築基準法(昭和25年)以前の木造住宅(伝統工法)だと、古民家と感じます。
※在来工法でも、築50年程度以上の木造住宅を古民家と呼ぶ解釈もあります。

 

 

 

今回のブログではリノベーション対象となる多様な木造住宅、それも「古民家」の一例として、I.D.Worksの新社屋敷地内で2021年6月に着工し完成に向けて進んでいる「住宅1」を少し掘り下げてみたいと思います。
なお住宅1はまちに開いた食堂となる予定です。

 

 

 

▲ 工事前の住宅1

 

 

▲工事中の住宅1(2021年12月)
※手前にあった白い建物は解体しました

住宅1は、建築基準法施行以前の昭和2年頃に建築された伝統工法の木造住宅です。

歴史的なメインストリート「萩往還」に面した古民家で、俗にうなぎの寝床とよばれるような細長い町屋が並ぶような地域にありますが、敷地の間口が広いためか和室が田の字に並ぶ農家的な間取りです。

 

 

▲住宅1の工事前平面図(右が道路側です)

 

 

 

それでは次に、住宅1の特徴的な部分を写真で見てみましょう。

 

①床下:現代的な基礎がない
現代的な鉄筋コンクリート基礎や土台がなく、柱は石の上に載っていて固定されていません。
柱の足元は足固めと呼ばれる横木で繋がれています。

 

 

 

②壁が少ない
現代の住宅より壁が少ないです。(現在の木造住宅は必要な壁の量が法律で定められています。)
伝統工法の木造住宅の壁は「筋交い」「合板耐力壁」というような現代的な耐力壁ではなく、土塗壁が主体になります。

 

 

 

③屋根がとても重い
住宅1の屋根は瓦葺きですが、土の上に葺いてあります。
2枚目の写真では軒先から葺き土が見えますね。
このように屋根を土で葺くことはかなり手間がかかるため、第二次大戦後には廃れました。
またこのタイプの屋根は葺き土がある分、とても重いことが特徴です。
伝統工法の木造住宅は重い屋根・土塗壁による上からの力(重さ)を、太い柱梁で支える感じになります。

一方、現在の木造住宅は伝統工法と比べて軽いです。
柱は上からの重みが小さい分、強風時や地震時の引抜きが問題になります。
そのため引抜力がかかる柱は金物と土台を介して鉄筋コンクリートの基礎に固定されています。

 

 

 

④釘や金物がない
柱梁の継手や仕口は木材の刻み加工によるもので、釘や金物はほぼ使用されていません。
一方、現在の木造住宅は釘や金物が多く使用されます。
国内で釘の大量生産が始まったのは19世紀末頃で、普及したのは戦後のことだそうです。
それ以前の釘(和釘)は鍛造品や鋳造品で、高価かつ木材ほど長持ちしないことからあまり使用されていません。

 

 

 

⑤古材の再利用
小屋組には、解体された建物から再利用したと思われる古材が複数みられます。
以前使われていたときの加工の形跡(建具の溝やほぞ穴)があります。
木材はしっかり再利用されていました。

 

 

これらは伝統工法の特徴を表しています。
印象的なところとしては古材の再利用でしょうか。

おそらく昭和2年頃に建築した際、それ以前にこの敷地にあって解体した建物や近所から調達した古材を再利用したものと思われます。
部材としては昭和2年(110年前)よりもずっと前の木材が一部使用されていると考えられます。

また物流網が発展していない当時、住宅に使う木材は地産地消(近所の山/近所の古材)が基本でした。
山口県では地元の木材として赤松がよく使われていました。

 

 

 

I.D.Worksはこのような伝統工法の古民家リノベーションも多く手掛けてきましたが、在来工法木造住宅のリノベーションに比べ判断の難しいところが多く手間も費用もかかります。
年季が入っているだけに、重大なシロアリ被害があって困ることもあり、正直良いことばかりではありません。

しかし、このような古民家には当時の大工技術や現在は入手困難な太い木材などが使用され、長い時間をかけて人々に住み継がれてきたからこその重みがあるものです。
建築畑の人間としてはこれらの価値が可能な限り受け継がれてほしいと感じています。

 

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