こんにちは。技術室の福田耕平です。
今回はリノベーションの断熱性能について【後編】のお話をさせていただきます。
■I.D.Worksが考える断熱改善リノベーション
断熱性能向上にどこまでコストをかけてどこまで改善するかは、常日頃から試行錯誤を続けています。
前回の記事でリノベーションのメリットとして「坪単価で新築より概ね1~3割は工事費が低い」ことを挙げました。基本的にはこのメリットが失われない範囲内での効果的な断熱性能改善を模索しています。
2021.07.16 staff blog 家づくりの技術 「 リノベーションの断熱性能のお話【前編】 」
主な部位としては「天井(または屋根)」「壁」「床」「サッシ(ガラス)」があります。
リノベーションの場合、天井・壁・床の内装仕上げは撤去します。
まず、「天井断熱(断熱材敷き込み)」「床断熱(根太間断熱)」に関しては容易かつ確実に断熱性能を向上できます。
基本的に内装仕上げを撤去する床と天井は断熱するのですが、天井を残す場合でも、小屋裏から天井断熱が可能な場合は断熱を検討します。
サッシは、既存アルミサッシ(シングルガラス)を撤去しアルミ樹脂複合サッシ(ペアガラス)に入れ替える計画をよく行っています。
この既存サッシ撤去新設の際にサッシ周囲外装材の補修や一部張替が必要となるため、意外と工事費がかかります。
しかし、サッシの改善は真夏や真冬に工事前後で明らかな体感的効果を感じるので、ここに工事費を掛ける価値はあるといえるでしょう。
▲無断熱の天井
▲無断熱の土塗壁
▲無断熱の床
▲シングルガラスのアルミサッシ
■I.D.Worksの標準的な断熱性能改善例
土塗壁のない中古木造住宅は既存内装(壁仕上げ)を撤去すれば、壁も含めて新築同様の仕様で断熱することができるので、全体として新築時と遜色ない断熱性能まで向上させることができます。
断熱性能向上を目指すなかで工夫が必要なのは、山口県では比較的多い土塗壁の住宅の壁断熱です。
土塗壁は地震や強風に対する耐力壁でもありますので、自由に撤去できるわけではないもの。
そのため土塗壁を残したままどのように施工するか工夫が必要になるのです。
理想を言えば、外壁仕上げを撤去し土塗壁の屋外側に「外断熱」したいのですが、外壁仕上げを更新する必要があるため相当な工事費が掛かります。
そこで外装仕上げの更新まで行わない場合は、屋内側にポリスチレンフォームt30mm程度の断熱層を新設する方法を採用しています。
▲こちらの表は、リノベーション対象の住宅に多い土塗壁型(無断熱)の場合のI.D.Worksの標準的な断熱仕様の一例です。
天井や床の断熱材の厚みについては予算によってより厚いものを選ぶこともあります。
▲新設した天井断熱ロックウールt92mm
▲新設した壁断熱ポリスチレンフォームt30mm
▲新設した床断熱ポリスチレンフォームt45mm
▲更新したアルミ樹脂複合サッシ(ペアガラス)
「同じ面積なら新築より概ね1~3割は工事費が低い」というコストバランスの実現と比較的温暖な山口県の気候を考えると、このレベルの断熱が現実的かつ問題なく施工できるラインであると考えています。
リノベーションのコスト的メリットを残したまま新築住宅の現行基準まで改善するのは意外と難しいのですが、元が無断熱の住宅を断熱改善するとリノベーションの前後で明らかな違いを実感できます。
もちろん、断熱性を優先することも可能です。