2021年1月8日。雪。
朝起きて窓に目をやると、そこは純白の世界だった。
ここまで降り積もったのはいつぶりだろう。
幼いころのおぼろげな記憶がなんだか懐かしい。
僕らが選んだこの暮らしは日常のざわめきから少し距離を保った環境で、川の水音が生活音の一部になっている。
鳥のさえずり、草木の葉擦れ、鴨の親子がゆるやかに泳ぎ渡る様子。
春は桜、夏は蛍、秋はすすき、冬は澄んだ空気と空――この土地で刻々と移り変わっていく四季にふれていると、心も自然と健やかになっていった。
しんしんと降り続いた雪が途切れ、青空に恵まれた午後。
川を挟んで向かいにある神社まで散歩にでかけると、見慣れた景色ががらっと変わっていた。
鳥の群れが飛び立ち、粉雪の舞う風景に圧倒される。
こんな時、自然と隣り合わせの暮らしは旅をしているようだと思う。
美しいものは何気ない日常の中にもあるのだとそう気づかされるようで。
今日のような日に見る家の灯りに、深い安心感を覚えるのはきっと僕だけではないはずだ。
自分の居場所が心地良く調うことの歓び。おいしい食卓を囲める幸せ。
この家は古い平屋をリノベーションした空間で、ずっと憧れていた薪ストーブを迎え入れ、暖かな冬を過ごせるようになった。
手間はかかるかもしれないが、不便さこそ楽しく愛おしいのだ。
僕たちはここでの暮らしを通して、ひとつの豊かさを教わっている途中なのかもしれない。
これから先、どんな風景と出会い、どんなことに心を揺さぶられるのだろう。
年齢を重ねてもなにかを感じる気持ちを大切にしていたいと思う。