福山・尾道 建築巡り

気持ちのいい秋晴れが広がった10月3日。

この日、設計スタッフ4名で、広島県の福山・尾道の建築を巡る弾丸ツアーへ行って来ました。

気になる建築をひたすら渡り歩いた1日をたっぷりご報告させて頂きます。

 

 

まず始めに訪れたのは、福山市にある「ホロコースト記念館」。

設計は、UID主宰の建築家 前田圭介さんです。
”インターローカルな設計活動”を掲げ、故郷である福山市を拠点に活躍されています。

 

 

 

ホロコースト記念館は、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の記憶を後世に伝える為に建てられました。

展示のテーマから重たい雰囲気を連想してしまい、近寄り難い場所になっているのでは……と思っていましたが、そんな印象は全くなく、大きなガラスからたくさんの光が差し込む居心地の良い建物でした。

 

 

遺品や当時を再現した部屋などを見ていると、歴史の教科書に1ページで簡潔にまとめられていたことを思い出し、心が大きく揺さぶられました。

これまでアンネの日記を手に取ったことが無かったですが、当時を生きた方々の想いを重ねながら読んでみたいと思います。

 

 

 

次に訪れたのは、2008年から図書館や地域交流の場として利用されている「福山市まなびの館ローズコム」。

 

こちらは東京を本社に構え、国内外で活躍している組織系建築事務所 日建設計が手がけた作品です。

大きなテーマは”建物と公園との一体化・水と緑の中で本を読む”。

 

 

壁面全体がガラス張りになっていて、そこから水面に反射するやわらかな光、周囲の緑が自然に目に入ってきます。

高級ホテルのロビーのような雰囲気の中、本をゆったりと読める、テーマ通りの空間設計です。

 

 

建物内部の特徴として、構造の梁下はボードを均一に貼り天井を平らに仕上げるという方法が一般的ですが、あえて梁を活かす設計になっていました。

その分、空調設備のダクトなどを隠すスペースがなくなりますが、その納まりも計算・工夫されているのだそうです。

 

 

 

次に訪ねたのは作家作品を展示販売したり、日々の生活が潤うような講座・教室を催す「ここちComfort Gallery 器」。

こちらの設計もホロコースト記念館と同じく前田圭介さんによるものです。

 

 

 


建物を隠すように育った樹木、その木漏れ日、屋根のトップライトから燦燦と降り注ぐ日差し……木材仕上げの室内と相まって、山小屋のようなあたたかい空間に感じられました。

 

 

 

この日は尾道市因島在住の陶芸家 吉野瞬さんの個展が開催されていました。

親しみやすいデザインと手触り良い器の数々、また”島縞(しましま)”という、革を縞々にカットし縫いあわせたバッグなどが展示されており、眺めているだけでも楽しかったです。

 

 

 

お昼時になったので、ランチのお店は鞆の浦の町並みを歩いて探すことに。

昔ながらの港町の雰囲気が残る素敵な路地。

 

 

 

あれこれと散策した結果、スタッフ全員がお肉を食べたい気分で一致し、「御舟宿いろは」に入店。

注文したのはたれ、わさび醤油、出汁と3段階に味の変化を楽しめる和牛あぶり重膳です。
ごはん大盛りだったのですが、黒毛和牛のあまりの美味しさにぺろりと完食してしまいました。

 

 

食後は真向かいのジェラート屋さんでピスタチオ味のジェラートを。

ランチからデザートへの動線がうまく図れている立地です(笑)。

 

 

 

お腹を満たしたところで、2016年にオープンした「神勝寺・禅と庭のミュージアム」へ移動。

 

この地で古くからある天心山神勝寺を基盤に、禅の世界をアートや建築とともに体感できる施設です。

広大な敷地の中には、ミュージアムや茶室、浴室などが建てられ、1日かけてゆったりと散策できる雰囲気でした。

 

 

受付を済ませるべく、まずは寺務所である松堂へ。

 

 

こちらの建物、柱を四角に製材せず、木の形そのままに使っていました。

まるで地面から自生したかのような、自然と一体の印象をもつ建物です。

 

 

 

遠くから見ると茅葺きのように見える屋根は、なんと銅板!

職人さんが手で曲げ、細かなフリル状にした銅を葺いていて、どれほど根気のいる作業であることかが伝わってきます。

 

 

予定時間が差し迫ってきたので、25分間のインスタレーションを体験できる「洸庭(こうてい)」に急ぎます。

 

 

予備知識を入れずに行ったため、なぜこんな形をしているのか、何のための建物なのか、正直頭が追いつかず終始「???」でしたが、暗闇の中で感じた波音とかすかな光を通して、座禅をする時のように心を無にすることが出来ました。

 

 

荘厳な建物の外装はサワラ材でひとつひとつ板張りされていました。

これは一体何をモチーフにしているのか……正解は、砂利を海の波に見立て、そこに浮かぶ大きな船、とのこと。

このお寺が造船にゆかりがあったことからイメージして作られたそうです。

 

 

 

神勝寺の後は、瀬戸内海を目指して車を走らせ、小高い山の中腹にある「リボンチャペル」へ。

 

こちらは東京でNAP建築設計事務所を主宰する建築家 中村拓志さんの作品です。

ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道というリゾートホテルの敷地内にある礼拝堂で、展望台も兼ねた教会になっています。

 

 

 

良心的なスタッフさんのご厚意により、オープン前のレストランも拝見させて頂けました。

店内のほとんどがガラス貼りとなっていて、素晴らしい景観を楽しめる計画になっています。

完全なオープンキッチンゆえに厨房と客席の距離感が近く、目の前で調理する臨場感も味わえそうした。

 

 

 

ホテルエントランス→レストラン・テラス・プール→チャペルというように、奥へ進むほど新しい出会いがありワクワクさせられる設計。

チャペルへと誘われるまでの、計算された動線が素晴らしかったです。

 

 

 

日が傾き始めた頃には、サイクリストの新名所である尾道市のU2へ。

 

 

ここは小さな街に見たてた倉庫内で、ホテルをメインに雑貨やカフェ、ベーカリーなどを有する複合施設です。

レンガとアイアン、古木のコンビネーションで洗練されたインダストリアルな雰囲気。

自転車をもっていなくとも、いつかマイ自転車で……と思ってしまうほどカッコいい空間でした。

 

 

そして1日の終わりに伺ったのは、京料理を手掛ける「高原誠吉食堂」さん。

 

 

こちらも前田圭介さんが2016年に設計した建物で、既存の店舗に耐震補強を含めたリノベーションを施したそう。

1階の壁は、前田さんらしく、木を用いた綺麗な仕上がりでしたが、上部の吹抜けは昔の梁や束がそのまま残されていて、温かさと重厚感を隣り合わせた造りになっていました。

 

 

大将は京都で研鑽を積まれてきた方だそうで、気品まとうお出汁とその料理たちに大感動……!

多彩な柄の豆皿も可愛く、一層美味しく感じられるようでした。

 

・・・

 

朝の7時30分に事務所を出発し、戻ってきたのは23時(!)。

広島の有名な建物をみっちり巡るツアーとなりましたが、不思議と疲労感はなく、どこを訪ねても新鮮な感動を覚えた濃い研修になりました。

 

意匠、土地へのまなざし、風景の切り取り方など、この1日で見て感じたことをお客様への大切な一棟に活かしていきたいと思います。

 

福山・尾道 建築巡り